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コラム
- スーパーの裏側
- 2025/10/24 15:00
レジ袋で純利益「億単位」のスーパー、ベルクは「無料配布」――元店長の疑問「有料化は環境のため?」
食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回のテーマは「スーパーのレジ袋、有料と無料の店の違い」。

(写真ACより) 目次
・レジ袋有料は、あくまで業界ぐるみの“紳士協定”
・大手チェーンにとってレジ袋は億単位の「純利益」
・スーパー「ベルク」が選んだ無料の“裏ワザ”
・レジ袋有料の店と無料の店、その違いは?
・「レジ袋有料化」は、環境問題を超えて“経営問題”レジ袋有料は、あくまで業界ぐるみの“紳士協定”
あなたがスーパーに行くとき、マイバッグを持参して「レジ袋」を辞退していますか? 2020年7月に全国で始まった「レジ袋有料化」も、すっかり暮らしに根付きましたね。
この本来の目的は、“プラスチックごみの削減”でしたが、「本当に効果があるの?」といった声は多く、根拠が乏しい部分もありました。スーパーでは「食品ロス軽減」や「トレー削減」も課題ですから、私たちが環境問題に関心をもつきっかけ作り、という意味合いのほうが大きかったのかもしれません。
そもそもレジ袋有料化は「プラスチック資源循環促進法」に基づく取り組み(法律)です。 とはいえ、違反しても厳しい罰則が科されるわけではなく、あくまで業界ぐるみの“紳士協定”のようなものでした。
しかし、スーパー各社は「ライバル店が“無料”を続ければ、お客さんがそちらに流れるかも?」という不安もあり、抜け駆け禁止とばかりに足並みをそろえて有料化の方向で進み、順調に広まっていきました。大手チェーンにとって、レジ袋は億単位の「純利益」
一方で、レジ袋有料化は、スーパーにとって思わぬ“副産物”をもたらしました。
それまで経費として“出費”していたレジ袋のコストが、わずかでもお金を取ることで「利益商品」に変わったのです。2~3円で仕入れた袋を5~10円で販売すれば、その利益率は200%以上。しかも買ったお客さんは袋代の消費税まで支払います。年間で「数億枚」単位の袋を配る大手チェーンにとっては、まさに億単位の「純利益」が転がり込む“ボーナス特需”でした。
私もかつてスーパーを経営していましたが、国が動く12年も前、08年から山梨県全体でレジ袋有料化に取り組んだ経験があります。
利益が出てしまう構造でもあり、個人的には実施に反対でしたが、県主導のプロジェクトとしてほかのスーパーを説得して回ったことを覚えています。その結果、お客さまのレジ袋「辞退率」は、なんと80%にも達しました。しかし、心のどこかで「これって本当に環境のためだけなのか?」というモヤモヤが消えず、現在に至ります。「レジ袋有料化」は、「レジ袋商品化」ということです。
“環境のためにご協力を”と呼びかけながら、売れば売れるほどスーパーに利益が発生する仕組み。もともと経費だったものが、突然「利益商品」に変わる……。経営者としてはありがたい半面、どこか後ろめたい気持ちにもなるのです。これを否定できるスーパーの社長はいないはずです。
スーパー「ベルク」が選んだ無料の“裏ワザ”
実際、スーパー「ベルク」の社長も、「レジ袋を有料にすると儲かってしまう」と率直に語っています。そのうえでベルクでは、あえてレジ袋の“材質”を変えることで無料配布を続けています。
というのも、法律ではプラスチックが原料の袋が対象で、それ以外の素材なら無料でも問題ないという“裏ワザ”があるのです。ベルクはその道を選びました。
つまり「儲かるから有料化する」のではなく、「儲かってしまうなら無料に戻そう」という逆転の発想です。私はこのニュースを聞いたとき、心の底から共感しました。
私が経営していたスーパーでは、レジ袋を原価の2円で販売し、辞退してくれたお客さんには2円分のポイントを還元していました。要するに“実質無料”です。お客さんに負担をかけず、環境意識も高められる。そんな思いが今さらながら届いた気がして、うれしく思いました。レジ袋有料の店と無料の店、その違いは?
一方で、今でもレジ袋の「無料配布」を貫くスーパーはあります。
中小スーパーや個人商店では、地域のお客様との関係性を大切にし、「うちは無料でいいよ」と自腹で袋代を負担するケースも少なくありません。2~5円とはいえ全員分となれば大きな負担ですが、それでも「お客様に余計な負担をかけたくない」という信念を貫いているのです。
では、有料の店と無料の店、その違いはどこにあるのでしょうか?
■有料の店
国の方針に従い「環境配慮」を掲げて有料化に協力した企業です。結果的にレジ袋の仕入れコストが減り、利益が増えたという“副産物”がありました。本音では、「もう無料に戻さないでほしい、今さらレジ袋のコストは負担しきれない」と感じているかもしれません。
■無料の店
逆に「うちは無料で勝負する」とコストを自己負担し、差別化を図りました。 あるいはベルクのように、材質を工夫して自社開発のレジ袋を製造した企業です。「うちは理念でやっているから、このままでいい。ただしお客様にはそれを知ってほしい」というのが本音でしょう。
「レジ袋有料化」は、環境問題を超えて“経営問題”
どちらも「現状維持を望む」という点では同じです。しかし将来、レジ袋が再び「無料」になるような流れが来たら、「最終利益率」がわずか数パーセントの中小スーパーや個人商店にとっては、レジ袋経費の増加が経営の命取りになりかねません。もはや「レジ袋有料化」は、環境問題を超えて“経営問題”になっているのです。
本来なら、レジ袋を有料にしなくても、みんなが当たり前にマイバッグを利用する世の中であることが理想です。
今回は、私の思いが強く出てしまいました。あなたを驚かせる点があったかもしれません。ただ、「レジ袋をどうするか?」という小さな選択の裏に、スーパーの大きな葛藤が隠れていることを、少しだけ知ってもらえたらうれしいです。 -
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