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スーパーで買った食品がカビていたら? 元店長が教えるクレームのコツ――「保健所に通報する!」は効果的でない

食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回のテーマは「スーパーで買った食品にカビが生えていたら?」。

スーパーで買った食品がカビていたら? 元店長が教える「仕方ないか……」と泣き寝入りしないコツの画像1
(写真ACより)

目次

スーパーで買った食品にカビが…… 
トマトやみかん、常温の野菜や果物は疑ってかかる 
購入時のレシートがなくても、店は対応します 
クレームは感情的にならず、事実を正確に伝える 
店の弁当で食中毒になったと思ったら
清潔なスーパーの見分け方

スーパーで買った食品にカビが…… 

 あなたは、スーパーで買った食品を家で開けた瞬間、「あれ? カビが……」とガックリした経験はありませんか? 
 
 期待して買ったはずの商品が傷んでいたときのショックは大きいものです。スーパーも商品チェックはしていますが、真夏の高温や輸送途中の温度変化、売り場での劣化の見落としなど、すべてを完璧に防ぐのは難しいのが現実です。 
 
 今回は、「カビや傷んだ商品に当たってしまったときの対応」について、元スーパー社長の立場から、現場の事情と“泣き寝入りしないためのコツ”をお伝えします。 

トマトやみかん、常温の野菜や果物は疑ってかかる 

 多くのスーパーでは、店の信頼に関わる商品の「カビや傷み」に細心の注意を払っています。 
 
 パック入りの「ミニトマト」や「イチゴ」、そして店で袋詰めする「みかん」や輸送時間が長い輸入野菜などは、商品同士が接触している部分から傷んでいきます。これらの商品に共通するのは、“常温”で販売しているということ。やはり常温では劣化が早く進みます。 
 
 一般的には、日に一度パックや箱を開けて商品チェックを行うことが多いのですが、人手不足や作業効率の問題で、「その日に入荷した商品はノーチェック」とか、「売れ残ってもそのまま値引きシールを貼っておしまい」という場合もあります。だからこそ、まずは疑ってかかることが第一歩となります。 

購入時のレシートを紛失しても、店は対応します 

 もしカビや傷んだ商品を買ってしまった場合、「仕方ないか……」とか「わざわざ言うのも面倒くさい」などと諦めてしまうことはお勧めしません。ぜひ店に報告してください。 
 
 なぜなら、レシートがあれば従業員は返金や同等商品との交換などの対応をしてくれますし、ほかのお客さんからも同様の申し出が来ている可能性も高いからです。 
 
 あなたが声を上げることで、残念な思いをする他の消費者を守ることにもつながります。 
 
 もしレシートを紛失してしまった場合でも、商品の現物と購入日や時刻を伝えれば、レジの購入履歴を確認の上、対応してくれます。また商品の状態が分かるような写真も役に立ちます。 

クレームは感情的にならず、冷静に! 事実を正確に伝える 

 ただし、クレームを入れる際は冷静に、事実を正確に伝えることが大切です。感情的になってしまうと、店側も適切な対応が難しくなってしまいます。どのスタッフに伝えても、しかるべき相手(部門責任者等)につないでくれるので大丈夫です。もちろん店舗に電話連絡でも構いません。 
 
 スーパーの現場では、理不尽に怒鳴り込んでくるお客さまや、店の対応に納得できずSNSで批判を拡散するお客さまが少なくありません。これらへの対応は従業員の大きなストレスとなり、「そんな程度で怒鳴られても……」と疲弊した声が上がるのも事実です。 
 
 とはいえ、これはクレームを無視してよいという意味ではありません。むしろ、感情的なクレームの背景にある本当の問題を見極め、冷静に対応できる仕組みや社員教育がますます重要になっています。

 クレームを担当者だけで処理し、店全体で情報を共有しないようでは、同じトラブルは繰り返されてしまいます。 

店が対応してくれなかったら? 「保健所に通報する!」は効果的ではない 

 「お店に伝えても対応してくれなかったらどうするの?」と不安になる方もいるでしょう。たしかに、「保健所に通報すべき?」と悩むケースもありますよね。 
 
 結論から言えば、最初に連絡すべきは商品を購入した店舗、そしてそのスーパーの本部「お客様窓口」の順になります。保健所は消費者と店舗のトラブルを解決する場ではなく、商品に事故があった際に、調査や指導をする第三者機関です。 
 
 つまり、「保健所に通報する!」という強めの言い方は、あまり効果的とはいえません。 私も現役時代にそう言われて、「ぜひ通報してください」と答えたこともあります。それより、まずは冷静に事実を伝え、店の対応に委ねることが基本です。 
 
 あなたの誠実な申し出であれば、ほとんどの店舗は真摯に対応してくれるはずです。 

店の弁当で食中毒になったかも?

 ただし、「食中毒」など健康被害が疑われる場合は話が別です。 
 
 例えば、店の弁当を食べて体調を崩したときは、まず医療機関を受診し、「診断書」を取ったうえで店舗に連絡してください。 
 
 実際に商品が原因で「食中毒」が発生した場合は、医療機関から保健所に報告する義務があります。その際、可能であれば食べ残しや包装を保管しておくと、原因特定の手がかりにもなります。 

スーパーの冷蔵ケースにある「温度管理表」をチェック 

 そもそも安心して買い物ができる店を見分けるには、どこを見ればよいのでしょうか? 
 
 ポイントは店舗の「清潔さ」です。商品そのものだけでなく、陳列棚や買い物カゴ、スタッフの白衣やエプロンの清潔感など、「全体のレベル」が高い店ほど安心です。 
 
 また、冷蔵ケースに設置されている「温度管理表」に注目すれば、意外と時間通りにチェックしていない店が多いことに気づくと思います。 
 
 もちろん、客側がマナーを破り、商品の中身を確認しようと無理に動かしたり、パックを指で押すのはNGです。これはほかのお客さんの迷惑になるだけでなく、衛生的にも問題がある行為なので「これは明らかに腐ってそう」という商品を見つけたら、指で押したりせずにスタッフに伝えてください。 
 
 商品が“傷んでいた”と気づいたときは誰でも戸惑います。しかし、それをなじみの店にきちんと伝えるあなたは、「クレーマー」ではありません。むしろ店にとっては改善のチャンスであり、今後も買い物をするお客さんの安心にもつながります。 
 
 あなたの一言が、店を変え、地域の食品の安全を守ります。それは誰もが安心して買い物を楽しめる環境をつくるための、「スーパーマーケットファン」の流儀でもあります。 

スーパーマーケットファン世論調査
<カビていたり、傷んだ食品をスーパーで交換してもらったことはある?>

合計:19
実施期間:2025年7月25日~期限なし
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  • 小林久(元スーパーやまと社長)
  • 小林久(元スーパーやまと社長)

    1962年山梨県韮崎市生まれ、山梨県立韮崎高校、明治大学商学部卒。山梨県に最盛期16店舗、年商64億円を稼いでいた創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長。先代からの赤字経営を引き継ぎ「破綻スーパー再生」を軸に短期間で業績を回復した。2014年頃から大手資本の進出により次第に経営が悪化、17年12月に倒産。自身も自己破産へ。自身の失敗から得た教訓を企業にアドバイスしている。著書『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)『続・こうして店は潰れた』(同文舘出版)。

    公式サイト

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