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コラム
- スーパーの裏側
- 2025/06/13 15:00
スーパーの元店長が教える「魚がおいしいスーパーの見分け方」! 実力が見えるポイントは?
食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回のテーマは「魚がおいしいスーパーの見分け方」。
(写真AC) 目次
・「魚がおいしいスーパーの見分け方はある?」
・スーパーの中でとびきり手のかかる「鮮魚部門」
・鮮魚売り場の鮮度、実力が見えるポイントは?
・「惣菜の寿司」と「鮮魚部の寿司」、実はまったくの別物
・スーパーの鮮魚売り場が果たす役割はもっと重要になる「魚がおいしいスーパーの見分け方はある?」
「魚がおいしいスーパーの見分け方はある?」
魚好きのあなたなら、そんなふうに思ったことはありませんか?
岐阜県や愛知県を中心に展開するスーパー「バロー」が、今年度中に関東(神奈川県)に初出店します。実はこのバロー、最近は珍しい「鮮魚」に強いスーパーで、鮮度と品ぞろえで競合店を尻目に売り上げを伸ばしています。では、そんなお店を見分けるにはどこに注目すればいいのでしょうか?
長年スーパーを経営した私のルーツは、海なし県(山梨)の鮮魚店です。小さな店でしたが、魚好きのお客さんに支えられて繁盛していました。一方、近年は精肉店発祥の「ロピア」や「肉のハナマサ」が、メインディッシュの一角である“肉”を武器に急成長中です。
しかし私もそうですが、本当は肉より、新鮮な「お刺身や寿司」、脂の乗った「煮魚・焼き魚」のほうが好きという人、案外多いのではないでしょうか。今回は“魚屋のせがれ”の視点で、こっそり鮮魚が強いスーパーの見分け方をお教えします。
スーパーの中でとびきり手のかかる「鮮魚部門」
まず知ってほしいのは、「鮮魚部門」はスーパーの中でもとびきり手のかかる部門だということ。商品数が多いうえに、仕入れた魚を捌(さば)くには“経験と技術”が必要です。しかも、お客さんに調理法を説明したり、食中毒など衛生面の知識も必要になります。
早朝から仕入れに行き、冷たい水に手を突っ込む仕事の割に、特別待遇が良いということもありません。そのため鮮魚を希望するスタッフは少なく、熟練スタッフはまさに店の財産といえるでしょう。
最近出店を加速している“食品も扱う”ドラッグストアでも、「鮮魚」だけは手を出さない、あっても「冷凍品」や「加工品」が多いのはそのためです。
それでは、売り場を見てみましょう。
まずは「刺身の盛り合わせ」です。ネタの種類が多く、美しく盛り付けられていたら、熟練スタッフがいる証拠。単品の刺身は、元からパックされている冷凍商品(マグロスライスやイカの刺身等)が多いため、人手はかかりませんが、どうしても売り場の鮮度感は落ちます。
バックヤード(作業場)が見える店は安心ですが、熟練スタッフが休みの日だけ、極端に商品レベルが落ちることがあります。あなたが「これちょっといつもの感じと違う……」と気づいたら、「目利き」に一歩近づいた証拠です。きっとその刺身は、夕方「値引きシール」が貼られることでしょう。
鮮魚売り場の鮮度、実力が見えるポイントは?
私の経験上、鮮魚売り場全体が「赤っぽい」マグロやネギトロ、サケばかりなら、“保存性重視”の店だと判断します。一方、白身魚の刺身(タイ、ヒラメ、スズキなど)が多く並んでいる売り場は、“鮮度勝負”をしている証拠。特に海が近い地域では、白身がずらりと並んでいます。鮮魚売り場をぼんやり眺めて「赤い」か「白い」かで、その店の実力が見えることがあります。
次に見るのは、「アラ」が売られているかどうかです。タイやブリ、サケの頭や骨などの“アラ”がパックで売られていたら、それは店内で丸魚を捌いている証拠です。「角上魚類」や「魚力」など鮮魚専門店には及ばなくても、生魚を丸のまま売っているスーパーの鮮魚部なら鮮度は安心です。
さらに、鮮魚加工に最低1人必要な「食品衛生責任者」がいるかどうか? プレートが掲示してある場合もありますが、いない場合は自社加工センターで集中製造した商品を冷蔵車で配送し、店舗ではただ冷蔵ケースに陳列しているだけ、というパターンかもしれません。
マグロのスライスやネギトロも「出来合い」の場合が多く、鮮度やオリジナリティは期待薄です。
「この魚を三枚おろしにしてください」とか、「お刺身の盛り合わせを5,000円で作ってください」などと頼んでみて、もし断られたなら……お察しの通り、熟練スタッフはそこにはいないでしょう。
「惣菜の寿司」と「鮮魚部の寿司」、実はまったくの別物
バローの鮮魚部、まぐろ握り鮨盛合わせ(写真:スーパーマーケットファン) 「寿司」好きのあなたなら、「この店、惣菜と鮮魚の両方に寿司があるけど、どう違うの?」と感じたことがあるかもしれません。これ、実はまったくの別物なんです。
「惣菜の寿司」は、基本的に自社の加工センターで作られたものを冷蔵車で配送して売り場に並べます。いなり寿司や太巻き寿司もあり、どの店舗でも同じ品質で提供しています。一方「鮮魚の寿司」は、ネタを切るところから店舗で行っています。一部冷凍の寿司ネタを使うことがありますが、マグロやタイなどは手切りのネタで鮮度をアピールします。シャリについては店で酢飯を炊くことはまれで、すでに「シャリ玉」になったものを仕入れる店が多いと思います。いずれにしても魚好きにとっては満足度が高く、他店との差別化にもなる重要な商品です。
寿司を店内で製造するには、鮮魚の作業場とは別に、寿司専用の製造室を設置することが法律で義務付けられています。そのため「鮮魚部の寿司」がある店は、それだけ“本気度”が高いことを表しています。私なら“厚切り”“地物”など目を惹くシールを見て、ニヤニヤしながら迷わず「鮮魚の寿司」を購入します。
スーパーの鮮魚売り場が果たす役割はもっと重要になる
スーパーがすべての部門で競合店に勝ちたいと思うのは当然ですが、どうしても得意部門とそうでない部門の差が出てしまいます。「魚力」は鮮魚店、「ロピア」は精肉店、「ヤオコー」は青果店といったルーツや歴史の違いが、今も売り場に色濃く表れているのです。
個人経営の鮮魚店が減るなかで、スーパーの鮮魚売り場が果たす役割は、これからもっと重要になります。さあ、今日からあなたも「魚の目利き」、 スーパーの鮮魚コーナーが、もっと面白くなりますよ。この記事を参考に、あなたの街の「魚に強いスーパー」を見つけて、日々の食卓をより豊かにしてみませんか?
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