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「スーパーよりお得?」元店長が教える「道の駅」「直売所」上手な付き合い方とは?

食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回のテーマは「直売所との上手な付き合い方」。

スーパー元店長が教える「道の駅」「直売所」オトクな買い物方法は? の画像1
(写真ACより)

目次

直売所はスーパーより“お得”なの?
【道の駅】メリット、デメリット
【JA直売所(ファーマーズマーケット)】メリット、デメリット
【民間青果物直売所(わくわく広場など)】 メリット、デメリット
スーパーと直売所、それぞれの強みは? 
日本ならでは“究極の”直売所とは
スーパーや販売所との付き合い方

直売所はスーパーより“お得”なの?

 10月に入り3000品目以上の値上げが伝えられ、テレビでは物価高対策として、わざわざ地方の「野菜直売所」に買いに訪れるお客さんの様子を報道します。 
 
 お客さんがやって来るのは、「農家が朝収穫した新鮮な野菜がスーパーより安く買える!」と期待してのことでしょう。そして実際、スーパーに並ぶ野菜よりもおいしそうに見えるから不思議です。 
 
 そんな光景を見ると、「スーパーより“オトク”なの? そもそもウチの近所にある農産物販売所って“どこ”が経営しているの?」と考えたことはありませんか? 

 今回はそれぞれの特徴と、スーパーと比較したときのメリット・デメリットをお伝えします。 

【道の駅】メリット、デメリット

 全国に1,230カ所ある「道の駅」、これは主に地方自治体(市町村)が運営しています。公共施設であることから、過度な利益追求はしません。そのため、納品した農家にメリットがあるように、道の駅への“手数料”も低く設定されます。 
 
 農家は毎日決められた時間に野菜を持ち込みます。市場やスーパーでははじかれてしまう「規格外野菜」や「チョイ傷野菜・果物」も納品します。ご高齢の農家にとっては、毎日の“お小遣い稼ぎ”にもなります。自治体、農家、消費者の「三方よし」の仕組み、それこそが「道の駅」の魅力といえるでしょう。 
 
メリット:「掘り出し物」に出会う確率が高いです。 
 
デメリット:人気ゆえに、朝のうちに人が殺到し、午後に行くと棚に商品がないこと。そして品ぞろえと陳列量が圧倒的に少ないことです。

【JA直売所(ファーマーズマーケット)】メリット、デメリット

 JAが運営する直売所は、「農協」に所属する農家さんが中心に出荷します。「道の駅」が国土交通省管轄であるのに対し、こちらは農林水産省の管轄です。「農の駅」と呼ばれる施設もあります。 
 
 まとめ売りが多いので大家族にはありがたい一方で、一人暮らしの方は「食べきれない」という悩みも出てきます。 

メリット:「品質管理の安定感」。出荷に厳しいルールがあるので、サイズや鮮度の基準がそろっていて安心感があります。価格も JAのルールの中で調整されるので相場感は安定しています。 
 
デメリット:価格は安定している半面、「直売なのに意外に安くない」と思われるのがデメリットかもしれません。 

【民間青果物直売所(わくわく広場など)】 メリット、デメリット

ショッピングモールの一角にある「わくわく広場」など、民間の直売所もあります。直売所に農家がテナントとして自分のブースを持つスタイルで、値付けも自由度が高いのが特徴です。 
 
あくまでも利益を追求する民間企業なので、スーパーと同じく「価格や品質」もさまざまです。 
 
メリット:青果物に限らず、関連商品(ドレッシング・ジャムなど)の品ぞろえが公共の直売所より充実しています。 
 
デメリット:価格や品質はさまざまです。 

スーパーと直売所、それぞれの強みは? 

 では、これら3つの直売所と、スーパーマーケットとの違いは何でしょうか。 
 
 スーパーの強みは、なんといっても「安定供給」と「安心保証」です。いつ行っても同じ品質の野菜が手に入り、さらに「傷んでいても交換してもらえる」安心感があります。 
 
 もちろん、どんな直売所でも「傷み」があれば交換はしてもらえます。実際には、商品管理は納品する農家が負いますので、傷む前に持ち帰り、クレームを防いでいます。 
 
 一方で“鮮度”と価格は直売所のほうが圧倒的に優位です。スーパーは流通や物流を通して並ぶため、どうしても収穫から数日経過してしまいます。見た目はきれいでも、「朝採りの香り」は直売所ならではです。 
 
 価格面では、スーパーは大量一括仕入れや産地との提携を総動員した「低価格」を実現していますが、直売所も仲介業者を介さずに仕入れるため、中間マージンが少なく、スーパーよりも低価格で販売しています。 
 
 これは野菜だけでなく「鮮魚」でも同じです。漁港近くの「海の駅」や漁協直売所には、その日の朝に水揚げされたピカピカの魚が並びます。 
 
 スーパーでも鮮度保持の工夫をしているので十分おいしいのですが、「今朝の海の匂い」まで体感できるのは直売所ならでは。ただし、こちらもやはり午前中が勝負で、午後には氷だけが残っていることもあります。 

日本ならでは“究極の”直売所とは

スーパー元店長が教える「道の駅」「直売所」オトクな買い物方法は? の画像2
(写真ACより)

 実は直売所以外にも、新鮮な野菜を手に入れる場所はあります。

 高速道路のパーキングエリアにある物産コーナー、イベント会場の特設販売所、野菜の「自動販売機」、そして地方でよく見かける「無人販売所」などです。 
 
 無人販売所はある意味“究極の”直売所で、農家が値段を決め、そのままカゴに入れて置いているスタイルです。100円玉を入れてきゅうりを持ち帰る、性善説に基づいた販売スタイルです。 

スーパーや販売所との付き合い方

 では、過去自分のスーパー内にも「農家直送コーナー」を設けていた私が考える“スーパーや販売所との付き合い方”とは。 
 
 正直に言えば、直売所は掘り出し物を見つける「テーマパーク」、スーパーは生活の定番商品を買う「インフラ」だと思います。直売所では、その時期だけの珍しい野菜や農家の工夫に出会えます。 
 
 駐車場が混雑したり、支払い方法が限られたりと、多少不便な点もありますが、行くだけで楽しく、思わぬ“掘り出し物”に出会うワクワク感があります。 
 
 一方、スーパーは天候が悪くても夜遅くても、行けば一通りの食材が揃い、肉も魚も調味料も一緒に買える。さらに返品対応やポイントサービスなど、日常生活を支えてくれる仕組みが整っています。私自身、買い物のメインはやはりスーパーです。 
 
 道の駅、JA直売所、民間直売所、それぞれに魅力があり、スーパーもまた違った強みがあります。 
 
 値上がりが続く時代だからこそ、私たち消費者は「選ぶ力」を身につける必要があります。それぞれの“良いとこ取り”をして、楽しく、賢く、暮らしを守っていきましょう。 

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  • 小林久(元スーパーやまと社長)
  • 小林久(元スーパーやまと社長)

    1962年山梨県韮崎市生まれ、山梨県立韮崎高校、明治大学商学部卒。山梨県に最盛期16店舗、年商64億円を稼いでいた創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長。先代からの赤字経営を引き継ぎ「破綻スーパー再生」を軸に短期間で業績を回復した。2014年頃から大手資本の進出により次第に経営が悪化、17年12月に倒産。自身も自己破産へ。自身の失敗から得た教訓を企業にアドバイスしている。著書『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)『続・こうして店は潰れた』(同文舘出版)。

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