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親の遺品整理、出張査定員の気迫に飲まれ……「売るつもりなどなかった」

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

親の家の片付けの画像1
(画像:写真ACより)

目次

出張査定員の圧力
明らかに興味がなさそうな態度に落胆した
「売るつもりなどなかった」査定員の気迫に飲まれた

出張査定員の圧力

 
 親を呼び寄せ、二世帯住宅で暮らしていた佐原美佳さん(仮名・60)は、両親が亡くなり、二度目の「親の家の片付け」に直面している。

 服は簡単に処分できたが、父親が大切にしていた碁盤と碁石、古い机は価値がありそうだったので、出張査定を頼むことにした。

 1社目、査定にやって来たのは若い女性だった。 
 
前回▶親の家の片付け、簡単に処分できない「高価なもの」――買い取り査定してもらったが
 
 女性社員は碁盤と碁石の写真などのデータを本社に送ったようで、査定を待つ間、おもむろにファイルを取り出した。 
 
「『弊社はこういうものも扱っています』と言いながら、貴金属や陶磁器、掛け軸、着物などはないかと切り出しました。確かにこの業者のホームページにはそうしたものも扱っていると書いてありましたが、私が買い取ってほしかったのは碁盤と碁石、机です。それらよりも、『本命はこちらにある』と言わんばかりの圧力を感じました。するとだんだん、せっかく家まで来てくれたんだから、少しでも彼女の期待に応えないといけないのではないかという気持ちになっていったんです」 
 
 佐原さんの両親は、田舎から呼び寄せたときに必要最低限のものしか持ってきていない。父親の愛用する碁盤や机のほかは、仏壇や両親が結婚するときに作ってもらったという水屋くらいだ。

明らかに興味がなさそうな態度に落胆した

 「古いものは田舎の家にたくさんありましたが、ほとんどは引っ越しするときに処分したので」と言い訳のように説明したものの、女性社員は「どんなものでもいいので」となおも食い下がった。 
 
 小さな床の間に飾っている掛け軸や額を見せたが、明らかに興味がなさそうだ。有名な作家のものでないということなのだろう、と佐原さんは落胆した。

 両親が大切にしていた掛け軸も額も、すべてが色あせたように感じた。 

 「アクセサリー類や昔のお金、記念硬貨などはないですか、としつこく言うので、母が使っていたタンスに無造作に突っ込んであったガラクタのようなアクセサリー類を出してきて見せました。といっても、母はずっと働いていたし、アクセサリーなどをつけることもほとんどなかったので、ネックレスとブローチがほんの少しあるだけです」 
 
 女性社員は、それらを一つひとつ確認していたが、唯一金が使われていそうなネックレスは「金の純度が低く、1,000円にしかならない」と言う。

 佐原さんは、ふと、昔母親に買ってもらったが、今ははやらないのでずっと使っていない金のネックレスがあるのを思い出した。

「売るつもりなどなかった」査定員の気迫に飲まれた

 
 「ほかに何かないかという、彼女の気迫のようなものに飲まれたんだと思います。売るつもりなどなかったんですが、見せるだけならと出してしまいました」 
 
 このネックレスで、ようやく女性社員は満足したようだった。2万円になるという。ほかのこまごまとしたアクセサリーは100円から500円。1000円と言われたネックレスも合わせて、3万ほどになるとわかった。 
 
 では、肝心の碁盤は? 
 
――続きは6月1日公開です

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  • 坂口鈴香(ライター)
  • 坂口鈴香(ライター)

    終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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