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コラム
- 老いゆく親とどう向き合う
- 2025/05/04 17:00
親の家の片付け、簡単に処分できない「高価なもの」――買い取り査定してもらったが
“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける” ――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)
そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。
(画像:写真AC) 目次
・父はきれい好きで捨て魔だった
・亡くなった父の処分できない「上等なもの」
・買い取りの査定員がおもむろに取り出したものは?父はきれい好きで捨て魔だった
親を呼び寄せ、二世帯住宅で暮らしていた佐原美佳さん(仮名・60)は、両親が亡くなり、二度目の「親の家の片付け」に直面している。
前編▼
親の家の片付けで直面した「売るに売れない状態」、死んだあとまで考えられなかった
「父はきれい好きで捨て魔でもあったので、母の死後、母のもののほとんどは処分してくれていたので、それは楽だったのですが、父は亡くなるまで自宅で暮らしていたので、父のものはそこそこ残っています。
まずは服から処分しようと手を付けたのですが、意外なほどの量でした。男性の衣類なので洋タンスひと棹くらいしかないのに、こんなにあるのかと思いました。私の死後、子どもが私の服を処分することを考えてゾッとしたほどです」
わが身を振り返り、自分の服も今から少しずつ減らしておかなくてはと自戒した佐原さんだった。
が、服はまだいい。佐原さんには、簡単に処分できないものがあった。父の唯一の趣味だった、碁盤と碁石だ。
亡くなった父の処分できないもの
「若いころから囲碁一筋と言っていいほどです。呼び寄せたあと間もなく仲の良い友人ができたのも、囲碁があったからだと言っていました。有段者だったので、碁盤と碁石にはお金をかけていたんです。遠くの有名な製作者のところまで足を運んで、高価な碁盤を作っもらったと言っていたのを覚えています」
おそらく数十万円はつぎ込んだのだろうと想像している。碁盤の厚みも数十センチある上等なもの。碁石もハマグリでできていて、囲碁に詳しくない佐原さんでも高価だとわかるものだった。
「息子に聞いても『いらない』と言うので、囲碁仲間に差し上げようかと思いましたが、囲碁仲間も皆さん80代です。いつまで元気でいらっしゃるかもわからないですし。お亡くなりになったら、結局そのお子さんが処分するだけでしょうから、それもどうかなと」
そしてもうひとつ、簡単に処分したくないものがあった。父親が使っていた机だ。
「田舎の役場に勤めていた父は、当時の町長が使っていた机を新しくするときに、古いものを捨ててしまうのが惜しいと譲り受けて使っていたんです。昭和初期から中期の、重厚な木製のもので、古いものが好きな方にはたまらないと思うのですが……」
碁盤も机も重くて、佐原さんが業者に持ち込むのは難しい。そこで、碁盤や美術品を出張して買い取るという業者2社に連絡し、査定してもらうことにした。
買い取りの査定員がおもむろに取り出したものは
「査定してもらっても即決はしないかもしれませんが、それでもいいか聞いたところ、どちらの業者も『もちろんです』という返事だったので、安心してひとまず査定だけのつもりでお願いしました」
1社目、やって来たのは若い女性だった。「こんなに若い女性が碁盤なんて査定できるんだろうか」と佐原さんは不安に思ったというが、大手だけにマニュアルがしっかりしているらしく、碁盤の厚さや盤裏の銘などを念入りに確認しては写真を撮って、本社に送っているようだった。
ただ机は、「弊社はこうしたものは不得意なので」と言って、見てもくれなかった。そして碁盤の査定を待つ間、この女性社員は「ここからが本番」とでもいうように、おもむろにファイルを取り出した。
――続きは5月11日公開
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