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「90代の父が運転を続ける」やめさせたいけど“見て見ぬふり”していた

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写真AC


“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

目次

どうしたら親が運転をやめてくれるか
父親の運転を“見て見ぬふり”していた
90代の父が運転を続ける言い分

どうしたら親が運転をやめてくれるか

 高齢者の交通事故のニュースは減ることがない。高齢の親がまだ運転をしているという子どもは、事故のニュースを見聞きするたびに寿命が縮まる思いをしているだろう。

 どうしたら親が運転をやめてくれるか、やめさせることができるか、頭を悩ませている子どもは多い。親が自分から免許返納を決めてくれたという話を聞くと、なんて賢明な親なんだろうと羨む声も少なくない。

 一方で、クルマがないと通院や買い物などができなくなって困る高齢世代がいるのもまた事実だ。毎回タクシーを使おうにも、経済的負担は大きいし、そもそもタクシー自体なかなか捕まらないのだという。免許を返納したものの、後悔しているという話も聞く。

 毎月のように親のもとに通っているMさんは、帰りに駅まで乗るタクシーは、帰省した日に予約している。当日では、タクシーを呼んでも来てくれないのだという。昔、実家近くにあったバス停は、数年前に廃止された。

 今、親の買い物は兄家族が行ってくれているが、兄がいなかったらお手上げだ。両親ともに介護認定を受けていればヘルパーに依頼するのだろうが、母親は自立と判定されたので家族分の買い物にヘルパーは使えないのだ。

 自立とはいえ、スーパーまで歩いたりバスに乗って買い物に行ったりする体力はないという。ましてや急に病院を受診するとなると、タクシーが捕まらなければ救急車を呼ぶしかない。地方とはいえ、県庁所在地だ。都市部でもそうなのだから、もっと辺鄙な土地に住む高齢者はどうなるのか。

 足を奪われるとは、これらの不便がすべて襲ってくるということだ。趣味の活動だって狭められる。そうして外に出なくなり、人と接する機会も減って、心身ともに弱っていく――本来、運転して出かけるくらいの身体能力のある高齢者をみすみす衰弱させることになるのではないか。ジレンマでもある。

ほんの数カ月前、父親が事故を起こした

 Nさんも、そんなジレンマを抱えながら、父親の運転を“見て見ぬふり”していた一人だ。

 Nさんは、90歳の父親が心臓病で急死した後、今後の自動車保険の扱いについて、保険会社に相談に行って驚いた。無事故で最高等級だった父親だったが、ほんの数カ月前、事故を起こして等級が下がっていたと、担当者から聞かされたのだ。

 金融機関の駐車場から道路に出ようとして、信号待ちで停車していたクルマにぶつかったのだという。100%父親の責任だ。相手が停車していたので、相手にケガがなかったのは幸いだった。

「そういえば、そのころ代車が来ていたことがあって、何かにぶつけたと言っていたような記憶があります。まさかそんな事故を起こしていたなんて……。思えば、クルマに小さな傷が増えていたし、やはり父の運転技術や注意力は衰えていたんだと思います。急死してしまった喪失感は大きいですが、もう事故を起こす心配はないと思うとホッとする気持ちもあります。大きな事故を起こさずに済んで本当によかった」

90代の父が運転を続ける「言い分」

 菅原智香子さん(仮名・62)の両親は関西の都市部に住んでいる。昔ながらの住宅地だ。両親のかかりつけ医やスーパーもそう遠くないところにあるので、ともに90代となった両親が二人で暮らしていくのに大きな問題はない。

 ――いや、なかった。

 離れて暮らす菅原さんは、なるべく毎月実家に帰るようにはしていたが、病気がちな母親の通院同行や日常の買い物は父親が担っていた。とはいえ、父親も足腰が痛むと言うので、移動はほとんどクルマだった。

「父は頭もはっきりしているので、クルマは支障なく運転できます。事故は心配でしたが、二人が生活するのにクルマは不可欠です。無理やり運転をやめさせることはできませんでした」

 菅原さんも手をこまぬいていたわけではない。父親に、運転をやめてタクシーやバスを使ってはどうかと提案したこともある。しかし父親からは、「年金暮らしなので、毎回タクシーなんて使えない。バスは本数が少ないし、バス停まで歩くのも足腰が痛む。買ったものを持ってバスに乗るのも大変だ」と断られた。

 父親には趣味もあって、その集まりに出かけるのを楽しみにしていた。自分の都合で動きたい父親にはクルマのない生活は受け入れがたかったのだ。せめてもの事故防止策として、軽自動車に買い替えて、前方の危険を察知するセンサーも付けていたという。

 それでも菅原さんは、父親がいつか事故を起こしてしまうのではないかと、毎日綱渡りのような気持ちだった。

ーー後編は3月30日公開です。

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  • 坂口鈴香(ライター)
  • 坂口鈴香(ライター)

    終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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