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コラム
- 老いゆく親とどう向き合う
- 2025/06/01 17:00
「母の人生が値踏みされた」――親の家の片付け、買い取り査定額に虚しさでいっぱいに
“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける” ――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)
そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。
(写真AC) 目次
・女性社員はようやく満足した
・「アクセサリーだけでも買い取らせてもらえませんか」
・定年まで働き詰めだった母の人生が値踏みされた女性社員はようやく満足した
親を呼び寄せ、二世帯住宅で暮らしていた佐原美佳さん(仮名・60)は、両親が亡くなり、二度目の「親の家の片付け」に直面している。
父親が大切にしていた碁盤と碁石、古い机は価値がありそうだったので、出張査定を頼むことにした。
1社目、査定にやって来たのは若い女性だった。碁盤と碁石の査定を待つ間、アクセサリー類などはないかとしつこく聞かれ……。
前回▶親の遺品整理、出張査定員の気迫に飲まれ……「売るつもりなどなかった」
昔、母親に買ってもらったが、今ははやらないのでずっと使っていない金のネックレスがあるのを思い出して見せたところ、女性社員はようやく満足したようだった。母親が持っていたアクセサリー類と合わせると、3万円になるという。
それよりも佐原さんが聞きたいのは、碁盤と碁石の査定額だ。「アクセサリーだけでも買い取らせてもらえませんか」
「やっと本社から返事が来たのが――もしかすると返事を待っている振りをして、その間に目当てのものを探す作戦だったのかもしれませんが、碁盤と碁石で8000円だと言うんです」
父親が、少なくとも10万円以上で買ったもので、それは大切にしていたのを知っていただけに、その値段で買い取ってもらう気持ちにはなれなかった。後日、もう1社にも査定してもらう予定なので、そこと比べて決めようと思い、「申し訳ないですが、今回は保留します」と伝えると――
「女性社員は、いったん『わかりました』と言いました。続けて、『手ぶらで帰ると私の成績に響くので、アクセサリーだけでも買い取らせてもらえませんか』と遠慮がちに言うんです。若い女性を担当にした理由はこれかと思いました。同情を引いて、売るようにしむける……」
営業トークだと思っても、断れなかった。「これって、押し買いと同じじゃない?」「本当に適正価格なの?」とモヤモヤした思いを抱えつつも、3万で母のアクセサリーと、母が買ってくれた金のネックレスを売ったのだった。定年まで働き詰めだった母の人生が値踏みされた
「定年までおしゃれもせずに働き詰めだった母の人生が値踏みされたような虚しさでいっぱいになりました。クーリングオフもできるとは伝えられましたが、そうまでして取り戻すほどでもない、と投げやりな気持ちになっていました」
しばらくは、両親への申し訳なさにさいなまれ、力が抜けたように過ごしていた佐原さんだったが、「まだもう1社ある」と希望を持っていた。ネットの口コミもそちらのほうがよかったし、美術品類を高額で買い取るというホームページに掲載された実例に父親の碁盤に似たものがあったので、高額査定が期待できるのではないかと思っていたのだ。
「それに、査定に来る日が、父の命日だったんです。これは何かの縁があるということだろうと……」
その日、やって来たのは、50歳前後と思われる男性だった。「やっぱり査定はこれくらいの男性の方が信頼できる」と喜んだ佐原さんだったが――
――続きは6月15日公開です
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