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80代男性、団地一人暮らしで「突然、体だけが動かない」! 助けを呼ぶにも……ゾッとするワケ

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)。そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

80代男性、団地一人暮らしで「突然、体だけが動かない」ーー携帯は手元になかったの画像1
(写真AC)

目次

団地で一人暮らしの80代「極力淡々と過ごすようにしてる」
いつも通り朝食をとった日……突然、体だけが動かない
「どうしようと途方に……」救急車が到着したが、次の難関

団地で一人暮らしの80代「極力淡々と過ごすようにしてる」

 押見征克さん(仮名・82)は、これまで大きな病気もしてこなかった。

 妻を40年ほど前に亡くし、今は都営住宅で一人暮らし。子どもたちは家庭を持ち、つかず離れずの関係を保っている。元気なうちは人の役に立ちたいと思い、週に1回高齢者に弁当を届けるボランティア活動をしている。

「はじめて10年以上になります。ただ弁当を届けるだけでなく、声をかけて変わったことがないか確認するのも目的のひとつです。利用している人は、私よりも年下の人もいますが健康状態は人それぞれだし、同じような年齢のボランティアがいることが利用者さんの励みにもなるんじゃないかと思って続けています。私も一人暮らしだから、週1回でも誰かと顔を合わせて話ができるのはありがたいしね」

 押見さんはそういうだけあって、若々しい。声にもハリがあるし、とても80代とは思えない。

 弁当宅配の利用者の中には、歳とともに一人暮らしが続けられなくなって施設に入った人や入院した人もいるし、突然亡くなった人もいるという。

「この歳になると、私もいつ何があってもおかしくない。だから利用者さんがいなくなっても驚きはありません。長く付き合ってきた人がいなくなると感慨深いものはありますが、極力淡々と過ごすようにしています」

いつも通り朝食をとった日……突然、体だけが動かない

 その「いつ何があってもおかしくない」ことが、起きた。

 前日から少々風邪気味ではあったが、朝起きたときは特に異常は感じなかった。いつも通り朝食をとって、軽い体操もした。ところが、昼近くなるにつれて何となくいつもと違う感覚があったという。

「すると突然体から力が抜けてしまったんです。意識もあるし、頭もはっきりしているのに、体だけが動かない。崩れ落ちてしまって、起き上がろうとしても腕に力が入らない。焦りました」

 しばらく様子を見たが、力は抜けたままだ。このままだと危ないと思った押見さんは、助けを呼ぼうと思った。が、携帯電話は手元になかった。

「それでもそんなに遠くにはなかったんです。居間で倒れて、ほんの数メートル先に携帯を置いていた。だから、携帯さえ取れれば何とかなると思いました。でも、その数メートルが遠くてね……」

 ありったけの力を出して――出したつもりだが、実際には“芋虫のようにして”、携帯まで進んでいった。ほんの数メートルの距離に、1時間以上かかったという。

救急車が到着したものの「どうしようと途方に……」

 やっと救急車を呼ぶことができた。

 安心した押見さんだったが、次の難関が立ちふさがった。

「うちは団地の5階なんです。玄関まで救急車が到着したものの、玄関にはカギをかけていたので救急隊が入れません。私も携帯までは何とかたどり着きましたが、玄関まではとても行けない。どうしようと途方にくれました」

 幸い、部屋の隣の住人とは顔見知りだった。救急隊が隣のチャイムを鳴らすと、これもまた幸運なことに在宅だった。

「隣の部屋に入れてもらって、そこからベランダ伝いにうちに来てくれることになりました」

 ちなみに、これらの経緯は救急隊員が押見さんと携帯電話で話しながら相談している。会話ができなかったらと思うとゾッとする。

 ところが、ここで再び問題にぶつかった。ベランダに面した窓にもカギをかけていたのだ。万事休す……?

ーー続きは7月13日公開です

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  • 坂口鈴香(ライター)
  • 坂口鈴香(ライター)

    終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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