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コラム
- 2025/02/16 17:00
「いずれは親と同居するつもりだった」……が、そうはいかない理由
写真AC “「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。
目次
・「いずれは親と同居するつもりだった」
・脳幹梗塞の後遺症が残った妻
・「私がやるしかありません」家事を担う「いずれは親と同居するつもりだった」
早くも2月……と言いながら、前回から続く老親にまつわる年末年始の話を。
年末年始に実家に帰り、老いた親とこれからの介護や相続など終活についての話をしたという人は多かったのではないだろうか。園田豪さん(仮名・53)もその一人だ。
都内在住の園田さんは中国地方出身。実家には、80代の父親が一人で住んでいる。父親と同じ市内に妹が住んでいて、ときどき父親の様子を見に行ってくれている。だが、妹も夫の両親と同居しており、中高生の子どもたちもいるため、そう頻繁に父親のもとに行けるわけではない。
まだ父親は介護も必要ではなく、自立して暮らしているが、何かある前に父親のこれからの暮らしをどうするか考えておきたいと思っていた。帰省する年末年始はちょうどいい機会だった。
「私は長男なので、若いころからいずれはふるさとに帰り、親と同居するつもりでいました。妻は東京出身ですが、私の意向に同意してくれていました。私が勤務する会社は、実家のある県に支社があるので、希望すれば転勤も可能です」
それなら、話は簡単だ。園田さん夫婦が実家に戻って、父親と同居するか、近くで暮らせばいい、と誰しも思うだろう。
ところが、そうはいかない理由があった。園田さんは、ここ数年悩み続けている問題を、あくまで明るく話してくれた。
「実は、妻が病気の後遺症で、体が思うように動かないんです」
脳幹梗塞の後遺症が残った妻
園田さんの妻は、10年ほど前に、脳幹梗塞で倒れたのだという。
「連休真っただ中の夜のことです。妻がめまいや吐き気、頭痛がひどくなり、救急車を呼んで救急病院に行きました。妻はもともとめまいの持病があったので、それを当直の若い医師に伝えると、めまいの薬だけ渡されて、『しばらく様子を見るように』と自宅に帰されたんです。脳に問題があるとは思わなかったのでしょう。大した検査もされませんでした。ところが、翌日になっても症状は治まるどころかもっとひどくなりました。今度は別の病院を受診し、MRI検査をすると脳幹梗塞だと判明したのです。発症した原因はわからないと言われました」
連休だったし、救急病院の若い医師が未熟だったのだろう。園田さんは「ついてなかった」と振り返る。
それでも、一時は死を覚悟したというほど苦しんでいた妻だったが、少しずつ回復した。懸命なリハビリも奏功して、恐れていた後遺症もそうひどくはなかった。半年後には自宅に戻ることができたのは、まだ幸運だったと思っている。
「言葉や記憶には問題ありません。マヒもほとんどないのですが、体の右側の感覚が鈍く、握力もなくなりました。病院からは『これ以上よくなることはない』と言われています。自宅で生活する分に問題はないのですが、家事には支障が出ています」
「私がやるしかありません」家事を担う
右手の握力がないので、包丁が使えない。鍋も持てない。歩くのに杖は欠かせなくなった。それも家の周囲くらいなら歩けるが、スーパーまで行くことは難しい。歩道の段差やわずかな傾きがあるとバランスを崩して転んでしまいそうだ。
妻は不安を訴え、一人で外出することもなくなった。外出時には常に園田さんが付き添うようになった。
自ずと、買い出しや家事は園田さんの役割になった。
「子どもたちは学生で、部活や塾で遅くなることも多かったので、私がやるしかありません。会社はフレックス勤務ができるので、朝早く出勤して、早めに帰って食事の支度をしています」
適当なものしか作っていないと笑うが、それでも「料理などしたことがなかった」という状態から10年、よくやっていると思う。
ーー後編は2月28日公開です。
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