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スーパーの元店長が明かす、驚きの「外国人窃盗団の万引き」手口! 万引犯の見分け方

食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回のテーマは「スーパーの万引き事情」。

スーパーの元店長が明かす、「万引き犯」のほぼ間違いない見分け方とは? 外国人窃盗団の手口に驚きの画像1
(写真AC)

目次

万引きは軽犯罪ではない
「万引き犯は冗舌」スーパーの万引き対策
外国人窃盗団の荒っぽい手口とは? 
万引きがなくなれば、もっと安く商品を販売できる 

万引きは軽犯罪ではない

 スーパーを語るうえで、つい目を背けがちな“影”の部分、それは「万引き」の問題です。今回は元スーパー経営者の立場から、実例をもとに万引きにまつわる話題をご紹介します。中には驚くこともあるかもしれませんよ。 
 
 「万引き」の語源には、「万(よろず)の商品の中から引く(盗む)」や「間引く(まびく)」など諸説あります。なんとなく“出来心”や“ストレス”を理由にした「軽犯罪」のイメージがあるかもしれませんが、これは「窃盗罪(刑法235条)」に該当する立派な犯罪です。 
 
 スーパーの粗利益率は20%程度。つまり、ひとつ商品を盗まれると、同じものを5つ売っても利益は帳消しになります。事実、万引きが原因で潰れた小規模な商店なども存在します。 
 
 ではスーパーにおける「万引き」被害は、金額にしてどれくらいあるのでしょうか? 
 
 「全国万引犯罪防止機構」の調査によると、現在、全国におけるスーパーの万引き被害は金額にして年間約1,800億円にも上ると言われています。一概にはいえませんが、スーパーは年商10億円が平均的とされ、その売上高の0.3%にあたる年間300万円もの“純利益”が、全国のスーパーから消えているのと同じです(少々古いデータですが全国6万店舗あるとされます)。 

スーパーの万引き対策 

 このように大きな万引き被害を防ぐため、スーパーはさまざまな対策を講じています。 
 
万引き対策①防犯カメラ 

 まず、「防犯カメラ」です。店内いたる所に設置されていることにお気づきの方も多いでしょう。形状も「カメラ型」や目立たない「ドーム型」、さらには経費削減のため「ダミーカメラ」を設置する店舗もあります。近年では、AIが挙動不審な客を事前に検知し、店員に知らせるシステムも登場しています。 
 
万引き対策②私服警備員 

 次に、「私服警備員」です。作業に忙しい店員に代わり、会社は警備会社に防犯業務を委託します。その際、警備員が最も注意するのは「誤認逮捕」です。警備員は100%確実な証拠がない限り、決して万引き犯を捕まえることはありません。もし誤認逮捕が発生すれば、警備会社が多額の“賠償責任”を負うことになるからです。現実的にはスーパーの万引き対策は、「捕まえるより、店から追い出す」ことが基本です。 
 
万引き対策③笑顔で話しかける 

 スーパーの従業員は店内で不審な客を見つけると、「業務連絡、5番通路、商品チェックお願いします」などと店内放送で“サイン”を送り、さりげなく様子をうかがいます。そこで「何かお探しですか?」と笑顔で話しかけ、「こっちはお見通しだよ」とプレッシャーをかけることも日常茶飯事です。 
 
 「万引き犯は冗舌である」、これは私の経験からくる“持論”です。万引き犯も緊張しているため、動揺を隠そうとフレンドリーに話しかけてくることがあります。不審な客が「今日のおすすめは?」なんて聞いてきたら、ほぼ間違いなく……(笑)。 

外国人窃盗団の荒っぽい手口とは? 


  万引き犯にもいろんなタイプがいますが、「プロ」と呼ばれる中には、わざと万引きをしたフリをして捕まり、誤認逮捕の“落とし前”を請求してくるつわものもいます。私も過去に、百万円単位の「謝罪金」を払わされた苦い経験があります。それを思えばテレビの「万引きGメン」の番組など、まだまだ穏やかなものです。 
 
 万引き犯の内訳は、年齢を問わず「女性の単独犯」が多く、次いで「男性の高齢者」が続きます。 
 
 “生活苦”のために万引きする人は実際には少なく、マイバッグの口を開いて忍ばせるような“幼稚な手口”はほとんどありません。盗む商品も千差万別、手口も実に巧妙化しており、外国人窃盗団の荒っぽい手口には驚かされます。

 人手不足で監視が甘そうな店に4~5人でやってきて、リーダー役が監視している間に値段の高い酒類や化粧品などを商品棚から“根こそぎ”奪って逃走するなどです。 
 
  さらに近年では「セルフレジ」の普及が、万引き犯にとって有利な状況を生んでしまいました。 
 
 「値引きシール」はセルフレジにも対応していますが、別の(より安い)シールを貼り替えることで、理論上不正が可能です。また、トレーにパックされていない「ばら売り」の揚げ物や魚の切り身などの数量を実際より少なく登録すれば、レジを通さない(通称)“カゴ抜け”も可能です。セルフレジにいるスタッフの仕事は、こうした不正をチェックすることでもあります。 
 
 実際に買った商品をスキャンせず、精算済みのカゴに移す行為はスーパー側でも想定済みです。そのため、会計前後の「重量」に差が出ると精算できないレジもあります。 

 従業員が必死にチェックしているはずですが、箱売りのビールなどは混雑時にはどうしても“目こぼし”が出てしまうので、万引き犯の狙い目となります。そのためAIカメラがセルフレジの不正をリアルタイムで捕捉しているケースもあります。 

万引きがなくなれば、もっと安く商品を販売できる 

 99.9%のお客さんにとって、なんの関係もない「万引き」を防止するために、店舗では多額の費用が発生しています。「もし万引きがなくなれば、もっと安く商品を販売できるのに……」、これはすべてのスーパーの本音ではないでしょうか。 
 
 最後に(古臭いかもしれませんが)、私は常々「お客さんに商品を買っていただくことは、自分の娘を嫁に出すのと同じくらい大切なこと」と説いてきました。それだけに本来、「万引き」は許されない行為であり、全国のスーパーマーケット従事者も同じ気持ちだと信じています。 
 
 万引きは「犯罪」です。社会全体で撲滅していかなければなりません。あなたがスーパーでお買い物をするとき、少しだけ店の「想い」にも目を向けてもらえたらうれしいです。 

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  • 小林久(元スーパーやまと社長)
  • 小林久(元スーパーやまと社長)

    1962年山梨県韮崎市生まれ、山梨県立韮崎高校、明治大学商学部卒。山梨県に最盛期16店舗、年商64億円を稼いでいた創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長。先代からの赤字経営を引き継ぎ「破綻スーパー再生」を軸に短期間で業績を回復した。2014年頃から大手資本の進出により次第に経営が悪化、17年12月に倒産。自身も自己破産へ。自身の失敗から得た教訓を企業にアドバイスしている。著書『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)『続・こうして店は潰れた』(同文舘出版)。

    公式サイト

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